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三宅登之 ― 文法を研究してますけど何か? ―

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2008年 05月 20日

動詞の意味を決定するための背景知識

今日の大学院博士後期では引き続き沈家煊2000《句式和配价》を読む。

以下のような例が挙がっている。

(1) 他扔我一只球。
(2) 他扔我一支烟。
(3) ?他扔我一支铅笔。
(4) ??他扔我一台收音机。

この適格性の差は、動詞“扔”の意味はICM(理想認知モデル。語の意味を決定するための背景にある百科辞典的知識)を構成しており、その中に次のような背景知識が含まれているからだという。

人们经常扔球给别人接,扔烟给别人抽等,但不经常扔铅笔给别人写、扔收音机给别人听。

ただ、記録として記しておくが、(1)もそもそも“给”を付けないと言えないという意見があったのは以前書いた通りだし、(3)は自然に言えて、逆に(2)は不自然だとするネイティブもいた。また、

(5)我写给他一封信。
(6)*我写给他一副春联。 (朱德熙1979文例)

の根拠は

“写”的ICM包括我们经常写信给人,但不包括经常写春联给人。

だと述べるが、こちらも(6)は問題なく言えるとするネイティブもいた。

結局この判定のばらつきは、「理想認知モデル」の「理想」を取り払って、文ごとに各人が様々な背景を想定しているからか。よくわからないが。

by sanzhai | 2008-05-20 22:06 | 中国語の疑問や気づき


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