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三宅登之 ― 文法を研究してますけど何か? ―

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2012年 07月 24日

読書メモ

一生モノの英文法、澤井康佑 著、講談社現代新書、2012年
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書店で偶然見かけて買いました。珍しい、新書本タイプのかっちりした文法書です。読み物として通読する文法書なので、通読しました。
これを読んでタイトル通り一生モノの英文法知識がすぐに身についたとは思いませんが、それは私の英語力によるものかもしれません。
実は読んでいちばん感動したのは、文法の記述の部分というよりも、
「STAGEⅠ 本格的な英語学習に入るための対処法」
「STAGEⅢ 今後の指針を知る」
のところで、英語学習においてまずは文法の基礎を身につけることが、いかに重要かを述べている部分です。

「多くの文法規則を暗記しても役に立ちません。そんなツマラナイ勉強はやめて、ネイティブスピーカーの感覚を知りましょう」「大切なのは、間違ってもいいから思い切って話してみることです。ネイティブに触れ、彼らのハートを感じましょう」というノリの、とっつきやすいだけで救いにならない書物や学習法(18ページ)

に引き込まれることなく、英語学習の基礎をきちんとした文法習得に置くことの重要性が強調されています。他書からの引用なのですが、

文法無視のコミュニケーション英語では挨拶や買い物止まりだが、しっかりとした英文法の上に積み上げた英語力は、挨拶や買い物はもちろんのこと、文化的な発言や学術的な議論にも対応できる。(20ページ)

わけです。
これだけ書くとまた「会話は重要でないのか」と誤解されるのですが、そうではありません。まず文法の基礎を固め、「辞書さえあれば大半の英文が理解できる」という状態になってから、大量の英語学習を進めていくのですが、そこでネイティブスピーカーとのふれあいの英会話型学習は有効なものになってきます。(309ページ)

読解学習の重要性を説いている箇所も共感がもてます。じっくり時間をかけて読んでも理解できないレベルの文を、一瞬で聞いて理解したり(リスニング)、自分から産出したり(スピーキング)できるはずがありません。

「読んでも理解できない文が多い」という事態が、その後の「聴く」「書く」「話す」への発展を阻止している根本的な原因です。よって、文法を習得した後は、膨大な読解演習を積んで英語の底力を養ってください。(305ページ)

という指摘は極めて重要です。

まあこれだけでも、本書の主張のごく一部だけを引用しているだけなので、誤解を与えるかもしれません。ぜひ本書を読むことをお勧めいたします。

by sanzhai | 2012-07-24 17:45 | 読書メモ


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