三宅登之 ― 文法を研究してますけど何か? ―

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カテゴリ:日本語や英語について( 22 )


2009年 02月 03日

「~より~でない」

前にも書いたような気がしますが、また書きます。

今日の1年生の授業で、比較構文をやったのですが、そこで「AはBほど~ではない」という、例の“没有”を使う構文を習いました。そこで、いつも気になっている日本語のことを話したのです。例えば“今天没有昨天冷。”の訳文ですが、次のどちらでしょう。

(1)
a.今日は昨日ほど寒くない。
b.今日は昨日より寒くない。

私自身の語感では、b.は「意味はもちろんわかるし、普段結構つかっているが、正しくない日本語」という感じがします。この文の正しい訳文としては、あくまでもa.を教えます。
ただ、今日の授業で1年生の皆さんに聞いてみると、b.にほぼ全く違和感がない様子。中には「普段はb.しか言わない」というコメントもありました。
まあ上の例だと私も実際には結構b.を使っているかもしれません。次の例はどうでしょう。

(2)
a.四川料理は湖南料理ほど辛くない。
b.四川料理は湖南料理より辛くない。

上記(1)以上にb.は変な感じがします(私は)。次はどうですか。

(3)
a.車を運転するのは、あなたが言うほど易しくはない。
b.車を運転するのは、あなたが言うより易しくはない。

ほらね!(←誰に向かって言っているのか意味不明。)私だったら(3)b.は非文のマーク「*」を付けるでしょう…。

まあここらへんの判断は、世代によっても違うでしょうし、個人差もあるでしょうね。
こういうのは日本語学ではうまく説明できることなんでしょうか。
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by sanzhai | 2009-02-03 00:50 | 日本語や英語について | Comments(7)
2008年 09月 17日

意味の2つある文

またまた続き。大津先生が、予稿集にはないが、パワポで紹介された例文。

When did the boy tell his father that he hurt himself?

これは多義文なわけだ。「いつ言ったか」という解釈と、「いつ怪我した」という解釈。ところが語を1つだけ換えて、

When did the boy tell his father how he hurt himself?

になると、意味は1つに限定される。
まあ専門の方にとってはおなじみの現象なのでしょうが。
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by sanzhai | 2008-09-17 23:55 | 日本語や英語について | Comments(0)
2008年 09月 16日

推薦のあった論文

日本認知言語学会の続き。シンポジウムで大津由紀雄先生が、予稿集には出ていないが、以下のチョムスキーの論文を紹介された。

Chomsky,Noam. 2005. Three Factors in Language Design. Linguistic Inquiry 36:1–22.

図書館にコピーを取りに行かなくても、以下のLinguistic InquiryのサイトでPDFをダウンロードして読むことができる。
http://www.mitpressjournals.org/toc/ling/36/1

この論文は、生成文法の立場の人だけでなく、認知言語学の立場の人もぜひお読みになるといいと思う、と紹介されていた。
早速ダウンロードし、プリントアウトした。(←コピーを取ったりプリントアウトすると安心してしまい読まないいつものパターン(汗))
いつか読んでみようと思う。(←「いつか」って、いつだ!!(濁流汗))
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by sanzhai | 2008-09-16 23:30 | 日本語や英語について | Comments(0)
2008年 09月 04日

辞書の中をめぐる旅

数日前のエントリー記事の関係で、日本語の「内(うち)」というのがそもそもどういう定義か気になり、ある国語辞典を引いてみた。(以下、関係する語義のところだけ書く。)

うち【内】 空間的に設定されたある範囲の内部。 ……(1)

この語釈を読んで「~の内部」とあるので、この「内部」の意味がわからないとする。同じ辞書を引く。

ないぶ【内部】 物の内側。 ……(2)

この語釈を読んでこんどは「~の内側」とあるので、この「内側」の意味がわからないとする。同じ辞書を引く。

うちがわ【内側】 物の内の方の側。 ……(3)

この語釈を読んでこんどは「~の内」とあるので、「内」の意味がわからないとする。しかしもう心配ない。(1)に戻ればよいのだ。こうして「内」の意味がわからない私(仮定)は、

  (1) → (2) → (3)
   ↑          ↓
   ← ← ← ← ←

とループ状態になるわけだ。

まあ、こういうのってよくあることなんでしょうか。
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by sanzhai | 2008-09-04 00:05 | 日本語や英語について | Comments(3)
2008年 08月 29日

白線の外

今日も秘密工作で都心へ。

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九段下駅に「白線の外」と書いてある掲示があった。「白線の内側までお下がりください」など放送でもよく言っている。ある中国人が、日本語のこの白線の「外」とか「内」という言い方の感覚がよくわからないと、以前話していた。

日本語で考えると、自分たちが電車を待ちながら立っているホームの空間を「内側」と認識しているのかなと思う。まあ確かに

 白線の こちら側 ⇔ あちら側
       手前側 ⇔ 向こう側

のような言い方も可能かもしれないが、それぞれ問題もありそうだ。放送で「白線のこちら側までお下がりください」と言われたら、とっさに「放送している人はどっちにいるんだ」「こちら側ってどっちだ」と考えそうだ。
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by sanzhai | 2008-08-29 22:21 | 日本語や英語について | Comments(2)
2008年 07月 29日

「中央線」のローマ字表記

武蔵境駅。「中央線」のローマ字表記のところが気になる。
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これだけだったら気づかなかったのだが、同じ駅表示の裏側に廻ると…
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「ちゅーおー」と伸ばすところを、ローマ字表記のアルファベット上の横棒で表しているのだろうが、「o」の上だけに横棒があるので、これだと

「ちゅおー線」

になってしまうのではないだろうか。(しかしそんなこと言っていたら上の写真の方は「ちゅお線」になるのか。)
いや、ローマ字規則を習ったのは大昔なので自信がない。息子が小学校でちょうど習っているようなので、今度聞いてみよう。
いずれにせよ駅表示の表と裏で表記が異なるのは変だ。どちらかに統一すべきではないだろうか。
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by sanzhai | 2008-07-29 22:38 | 日本語や英語について | Comments(4)
2008年 07月 18日

広島方言「たちまち」

昨晩テレビを見ながらワイシャツにアイロンをかけていたら(汗)、「秘密のケンミンSHOW」という番組で、次のような「ケンミン用語の基礎知識」を紹介していた。

「広島県民は、『とりあえず』を『たちまち』と言う」

私の母語は広島方言である。上記は確かにその通りで、「たちまち~しょうや!」(標準語訳:「とりあえず~しようよ!」)のように使う。標準語の「たちまち」とは意味も違うし、あと重要なのはアクセントが違う。(広島方言の「たちまち」は「た(中)+ち(高)+ま(低)+ち(低)」と、「ち」を一番高く読み、その後の「まち」は極限まで低く発音する。)
ただ私個人の語感では、この「たちまち」はうちの父親なんかがよく使っている。つまりそのくらいの世代の人たちの常用語彙のような印象がするが、自分はその年配の世代ほどは使わないと思う。
ところが番組では広島のけっこう若い人たちが「たちまち」をよく使うと言っていた。
私の脳の中の広島方言が徐々に標準語に侵食されつつあるということか?それとも単なる個人差か。

番組では広島県民としてアンガールズが出ていた。広島出身といえばPerfumeもそうです。矢沢永吉も広島出身だというのはごく最近になって知りました。
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by sanzhai | 2008-07-18 22:58 | 日本語や英語について | Comments(0)
2008年 07月 07日

多い姓

水曜日にリレー講義「世界のことばと人々」中国語の回があるので準備をする。
その話題の中で中国人の姓のことがあるのだが、それは授業でしゃべるとして、ついでに日本人の多い姓の順序が気になり、ちょっと調べてみた。
(容易に想像がつくように、こういう場合ネットで検索すればすぐに一応の回答が出てくる。便利といえば便利だが、何だか空しくもある。)

ウィキペディアに「姓」という項目があって、それによると、日本人に多い姓のトップ10は次の通り。
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%A7%93

1位:佐藤、2位:鈴木、3位:高橋、4位:田中、5位:渡辺
6位:伊藤、7位:山本、8位:中村、9位:小林、10位:加藤

(11位以下も知りたい方はウィキペディア上記ページをご覧下さい。)
私は日本人に多い姓のトップ3は「佐藤、鈴木、田中」だと思い込んでいたので、3位が「田中」ではなく「高橋」だと知って驚き。
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by sanzhai | 2008-07-07 22:31 | 日本語や英語について | Comments(0)
2008年 05月 30日

「空席」の意味カテゴリの拡張

旧ブログで「満席」という言い方について書いたことがある。
http://sanzhaidengzhi.blog.so-net.ne.jp/2007-09-07
今回は、「空席」という言い方について。

抽選に外れたため、今年度から通勤時利用する武蔵境の自転車駐輪場はとりあえず現時点では「当日利用」の場所を使う状態になっている。この当日利用の駐輪場、早い者勝ちで、少し遅くに行って自転車を置くスペースがなくなったら、もう駐輪できない。
e0145687_2353121.jpg

この「空席」、どう考えても「自転車を駐輪できる空きのスペース」という意味で使われている。もちろん実際には自転車を駐輪するスペースには座席はない。
「空席」という語の意味カテゴリが、本来の意味(空いている席)から、拡張義(空いている場所)へと拡張した例と考えるべきか。
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by sanzhai | 2008-05-30 23:24 | 日本語や英語について | Comments(0)
2008年 05月 26日

「ぼったくる」と「ぶったくる」

国語辞典を眺めていると、「ぶったくる」という語が視界に入ってきた。(←紙辞書だからできること。)

ぶったくる【打っ手繰る】①強引に奪い取る。ひったくる。「バッグを―・られる」②法外に高い代金をとる。ふんだくる。ぼる。「バーで―・られる」(『明鏡国語辞典』大修館書店)

私は母語は広島方言で、標準語は大学入学で東京に来てから学習したものである。それでも東京で暮らしてもう長い年月がたっているが、恥ずかしながら、上記「ぶったくる」という語彙は、私は知らなかった。人が使っているのを聞いたら、文脈からなんとなく意味を推測できるかもしれないが、少なくとも自分では絶対に使わない。

では自分ならどう言うか。
私ならこれは間違いなく「ぼったくる」と言うと思うのである。だから、「ぶったくる」という聞きなれない語彙が目に入ってきたとき、「ぼったくる」の間違いなんじゃないのかと疑ったくらいである。ところが辞書を引くと「ぼったくる」は掲載されていない。

電子辞書に、ヒントらしいものを見つけた。ボタンを「ぼったく」まで押していったところで、画面に「ぼったくり」が出てきたのである。(←電子辞書だからできること。)

ぼったくり
物やサービスを提供する者が、消費者から不当に高額な対価を請求する行為。低料金に見せかけた勧誘を行い、実際には高い料金を請求するなど。〔盗人の隠語で「かっぱらい」、また大阪方言の「ぼったくる(=無理に奪いとる、ふんだくる)」からか〕(『スーパー大辞林』三省堂)

最後の「大阪方言の~」の箇所に注目したい。私の語感では、広島方言にもそれは存在する。そうすると、「ぶったくる」を見て「ぼったくる」じゃないかと思ったのは、私の広島方言の影響か。(それにしてもことばを知らなくて恥ずかしい。反省。)
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by sanzhai | 2008-05-26 23:31 | 日本語や英語について | Comments(2)